四十二日目
2021.1.6(水)
行程:
六十一番『香園寺(こうおんじ)奥の院』→高鴨神社→六十二番『香園寺』→清楽寺→六十二番『宝寿寺』→芝の井→六十三番『吉祥寺』→石鎚神社→六十四番『前神寺(まがみじ)』→ホテルセントラル西条



【四国での再会】
 起床、今朝もラーメンとサラダを食べる。東屋の中に設てたテントを撤収。
 歩き出して1kmほど進み松山自動車道をくぐりぬけると大谷池に着く。池のほとりはきれいに整備されており、芝のはられた広場にはこれまたきれいなトイレと東屋があった。
 なんと!昨日あと10分ほど歩を進めていればちゃんと水が流れる綺麗なトイレに出会えたのだ。知らなかったものは仕方がない。先に進む。
 次の目的地である『香園寺』の裏側には『高鴨神社』がある。以下に神社の看板の記述を引用する。

『雄略天皇(5世紀)の時代、大和の国、南葛城郡にご鎮座の高鴨神社の御分霊をお迎えして祭ったのが始まりといわれています。霊峰石鎚山を開いた役の行者の氏神で、平安時代には伊予の国の官社となり、室町時代には周布郡の領主黒川氏、江戸時代には小松藩主一柳(ひとつやなぎ)氏が代々崇敬しました。嘉永元年、雨乞の霊験により天皇から正一位の神階を受けられました。』

 この記述に登場する『南葛城郡の高鴨神社』は私の生まれ故郷である奈良県御所市にある。鈴鹿宮司の娘さんとは中学校の同級生だ。
 カモといえば京都の下賀茂・上賀茂を思い浮かべる人が大多数だろう。そのカモ氏の出自は奈良県御所市なのだ。
 遠く愛媛の地に来て出会った高鴨神社。奈良県の歴史の深さと当時の政権の力に思いをはせながら神社を回る。


【六十一~六十三番札所】
 標高を下げて香園寺(こうおんじ)に至る。香園寺の姿かたちは八十八の中でも、いや、一般的な寺院建物のなかでも特異中の特異である。茶色い箱だ。遠くから見たらセレモニーホールか学校の体育館か市町村の公民館的な施設にしか見えない。
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 境内に人はいない。とりあえず禁止されてないようなので鐘を突く。茶色い箱の正面には賽銭を入れる場所があるがどうも御本尊の姿が見えない。ちゃんとお参りするには寺に入る必要があるようだ。
 入り口はどこだろう?きょろきょろしてみると建物の脇に階段をみつける。階段をあがった先には重厚なガラス扉が立ちふさがる。まるで百貨店だ。そごうの扉だ。鍵はかかっていないのでありがたく入らせてもらう。先は土足禁止になっている。スリッパが準備されているので靴を脱いで履き替える。建物内部はそれはもうセレモニーホールか映画館のよう。入って左手奥には椅子がずらりと並び、右側にはご本尊がいらっしゃる。御本尊はライトアップを受けて光り輝いている。参拝客はまだ皆無だ。
 いつものようにご本尊、お大師様とお参りをすませて建物を辞した。
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 次は清楽寺へ向かう。清楽寺は六十番横峰寺の前札であり元札だ。前札と元札の意味は今もよくわかっていないが、お大師さまゆかりの地としてかつてお遍路さんがお参りした場所、とでも理解しておけばいいだろう。
 国道11号をぬけてわかりにくい横道にそれてJR予讃線を渡ると清楽寺である。お遍路ビジネスをしていないお寺なので八十八の寺とは趣が異なる。いうなれば、どこの集落にでも一軒はありそうなたたずまいのお寺だ。たいがいのお遍路さんは立ち寄らずに通り過ぎてしまうだろう。お参りをすませて国道へ戻る。

 次は六十二番『宝寿寺』を目指す。このお寺は住職が参拝客に暴力をふるったということでいっとき八十八の寺から除外されていた話題のお寺だ。駅前にあるそれはこじんまりとしている。境内をのぞくと坊主が一人歩いていた。登山者が使っているような杖を一本づつ両手に持ち、ノルディックの要領で境内を歩き回っている。
 街中のお寺ということもあり鐘はつけないようなのでご本尊とお大師様への参拝のみとする。経を読み終わり振り返ると先ほどまで歩きまわっていた住職の姿は消えている。境内を見まわしてみると、社務所のガラス戸の向こうに姿が見えた。どうやら参拝客たる私が来たのでご朱印の準備をしているらしい。すまないが私はスタンプなど欲しくない。坊主を横目にさっさと寺を辞した。
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 六十三番の吉祥寺に行く前に奥の院とされている芝の井に立ち寄る。石で四角に成形された浅い水場にお大師様が立っている。低層住宅地のどまんなかなので経も上げずに一礼して先に進む。
 国道に戻り六十三番吉祥寺に到着。ここは禁止されていないので堂々と鐘を二回突く。吉祥というだけあってご本尊は毘沙門天だ。毘沙門天を祀るのは八十八の寺の中では唯一吉祥時のみである。ちょっとほほをにやけさせつつ『オンベイシラマンダヤソワカ』を唱える。
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 さて、次の目的地は六十四番前神寺(まがみじ)だ。国道11号をそれて国道と南に並行する遍路道を歩く。国道11号は車が多い上に歩道は狭い。歩きであれば遍路道を通るのが安全だ。
 前神寺を目指して東へ進んでいると大きな鳥居が目に入った。額束を見てみるとどうやら石鎚神社らしい。石鎚といえば西日本最高の標高を誇る霊峰であり天狗の棲家である。そんな石鎚神社が私の興味を惹かないわけがない。今日の予定に入ってはいなかったが急遽石鎚神社に立ち寄ることにした。

【石鎚神社・六十四番前神寺】
 国道をそれて坂を登っていく。通常の神社なら随神、お寺なら金剛力士像が鎮座している場所には鼻高天狗がいる。天狗様の隣、門の横にリュックと杖を放置して神社の階段を登っていく。初詣、といったところだろうか。参拝客は多い。境内にはとうもろこしの屋台もある。屋台にはりつけられた紙にはゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙がいたので思わず携帯で写真を撮ってしまった。
 階段を登り詰めた拝殿前の広場からは愛媛の平野と瀬戸内海、そして海を挟んで遠くには山が見える。山の正体は瀬戸内海に浮かぶ島々だろう。境内の敷地は広い。御大師様像、石鎚山遥拝所、役行者像などを拝してゆっくり堪能し、社務所で煮詰まったものすごく苦いコーヒーをいただく。神社を辞する。
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 さて、六十四番前神寺(まがみじ)は石鎚神社からそう遠くない。こちらは石鎚神社と比べて人がまばらだ。人より猿の方が多いくらいだ。境内の真ん中にどかんと立つ門松が悲しい。しかし賽銭はすでにしっかりもらっているらしく、トイレの横に小銭がたくさん積まれていた。

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 今日はホテル泊である。
 伊予西条駅前の西条セントラルホテルに宿をとっている。まだ時間は早いが宿をとってしまったので今日の進捗はここまでとしてチェックインする。さっそくシャワーを使うがいつまでたっても温かくならない。仕方ないので近場の日帰り温泉に行った。
 そして飲酒も今年は解禁なので夜は居酒屋なのである。西条のうまいものを食おうと思う。

【歩いた距離、歩数】
18,721km 27,138歩

【つかったお金】
ごはん 953円
酒   160円
お賽銭 302円
宿   2,755円
洗濯  300円
風呂  620円
居酒屋 4,190円


石鎚
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