四十日目
2021.1.4(月)
行程:
五十八番仙遊寺→竹林寺→五十九番国分寺→世田薬師→臼井御来迎→実報寺→日切大師→別格十一番生木地蔵→丹原総合公園

その2

 コーヒーを飲み終えて今治市を北へ。五十九番『国分寺』を目指す。
 国道196号ぞいに歩いていると白い車が停まっている。その横には全身をアウトドアブランドのアークテリクスでかためた男性が立っている。
 「お四国参りで?歩き?カッコイイなあー!!ちょ、写真撮らせて!!」
 男性はザックを背負って杖突き歩いている私の姿を見つけて、車を止めて待ち構えていたそうだ。
 男性はなんと昨日石鎚山に登ったらしい。インスタグラムにうpったきれいな写真を見せてもらう。空の青と雪の白が見事なコントラストである。
 昨日石鎚山に登った人に出会うのはこれで二人目である。すごい偶然だ。
 少し話をして別れる。私が国分寺の方向がわからずまごついていると男性はここをまっすぐ行って右に曲がるとすぐ着きますよと教えてくれた。

 国分寺に到着である。参拝を済ませて県道156号を南下する。
 仙遊寺の歩き遍路さんと再会するとすればこの道だろう。だけれど彼はまだ来ない。

 県道沿いの道の駅『今治湯の浦温泉』で休憩する。名前通り温泉があることを期待していたがそこには入浴できる温泉はなく、噴水だけがあった。落胆して先へ進む。

 道の駅を過ぎてまたもや今治小松自動車道をくぐり、世田薬師へ向かう。境内は年始で人がごったがえしている。ここから2kmほど登ると世田薬師の奥の院らしいが面倒になり行かなかった。

 ここからは番外霊場が続く。
 まず『臼井御来迎』をたずねる。民家の裏にちまっと立つ小さなお堂だ。隣にはあずまやがある。そのあずまやでは野宿できないが、ここから1km歩いた光明寺で宿泊ができるという張り紙がしてある。
 次は『実報寺』だ。ここは地蔵の寺だ。最高だ。
 そしてまた戻って『日切大師』へ向かう。こぢんまりしているがここも雰囲気がある。良い寺だ。
 八十八か所では得られない充足感を胸にどんどん郊外へ向かう。

 民家で飼われているポニーを眺めて丹原町へと入っていく。
 途中で軽トラに乗る男性に声をかけられる。
 「どこまで行くの」「生木地蔵までです」「生木……ああ、あそこか。場所わかるか?」「はい!大丈夫です。ありがとうございます!」

 そうして六十番『横峯寺』がある山を正面から左手に変えて県道48号を西へ進む。
 別格十一番『生木地蔵』に到着である。
 この時は気づかなかったが私は300円の珠をいただくのに500円玉を出して、300円受け取ったらしい。
 生木地蔵をあとにして買い出しを終える。今日は月曜日なのでジャンプを買う。それから進行方向は北に変える。次の目的地は別格十番霊場『興隆寺』なのだ。
 しかし今日はもうタイムアップ。丹原総合公園にて幕営する。

 丹原総合公園に到着する。公園には子供連れの家族がたくさんいる。目立ちたくない私は公園のはずれにあるトイレ近くのベンチに腰掛けて、ビールとおつまみをいただきながらジャンプを読む。
 お遍路中はアルコール断ちをする!と決めて歩き始めたわけだが、年越しの宴でビールと日本酒を飲んで以来、お遍路で酒断ちすることに意味ある?と思い直して、普通に酒を飲み始めたのだ。
 ほろ酔いになってきたころ、おばあさんに声をかけられた。
「歩き遍路か、えらいな。がんばって!これあげる!あ、これも。ここにもあるな、これもあげる!」と、ポケットに入っているお菓子を一切合切私にくれた。

 好きな時に歩いて好きな時に飯食って酒飲んで好きな場所で寝て仕事もせずだらだらしているだけのお遍路。そんな私に励ましと称賛の言葉をくれてさらに食べ物まで与えてくれる。
 四国の人にとってお遍路さんとはなんなんだろう。厄介なもの?ありがたいもの?応援したいもの?忌避すべきもの?私が自分の家の近くに遍路道があったりなかったりしてお遍路さんがたびたび歩いてきたらどう思う?いやか?うれしいか?

 歩き去る女性を見送り再びベンチに座りビールを飲み、お遍路とは何なのかについて改めて思いをめぐらした。


【歩いた距離、歩数】
33.33km 48.370歩

【つかったお金】
ごはん 1,372円
お酒  168円
お賽銭 11円
ジャンプ 300円
珠   300円