四日目

行程:玉が峠→別格二→十三番~十七番→鮎喰川河川緑地


  獣のような!あなたに抱かれて!あたいの人生!狂っちまったよ! 今日も、あなたに抱かれたい 般若心経!!

 お大師さまと同行二人、つまりは、『四国限定お大師さまとお泊まりデート』である。そう悟った私のテンションは変な方向へ向かっていた。冒頭の歌を叫びながら歩くことが数日続いた。知らない人は『東方M-1、鳥獣妓楽』でぐぐってもらえればいいかと思う。


 玉が峠には水道がある。プラティパスに水を満たして浄水し水筒に詰める。パンとカルパスを食べる。このカルパス、タンパク質が10g以上摂取できかつ100円だ。そして脂肪も豊富だ。プロテインバーを買うよりコスト効率がいい。
 トイレででかいうんこをして気持ち良く出発する。

 今日の旅程の一発目はまた別格札所だ。『童学寺』という。童学寺と十三番『大日寺』の分岐点には『歯の辻神社』という神社がある。童学寺に行ったあとにまた歯の辻神社を通る。
 ならば大山寺の経験を活かそう。
 重たい荷物は歯の辻神社にデポし空身で童学寺へ向かう。神社にザックを置き、貴重品、水、杖を持って歩き出す。トンネルが見えてきた。この旅初のトンネル通過だ。歩いて大丈夫だろうかとびびっているとトンネルの中からランナーがやってきた。安心した。

 童学寺に到着する。童学寺にはたくさんのお地蔵さんが祀られていた。名の示すとおり子供に関連したご利益のお寺なのだろう。
 参拝をすますと早足で神社へ戻った。早足過ぎて散歩していたらしき女性にきゃっと驚かれた。
 ザックは無事元通りにあった。神社に賽銭をいれてザックを背負う。

 この道は八十八ヶ所からそれている遍路道だ。
 歩き遍路は『ガードレール、カーブミラー、電柱』を目を皿にして観察する。白地に赤い矢印の『お遍路ステッカー』が貼られているからだ。ここは本来の遍路道からそれているのでお遍路ステッカーや道標は少ない。地図とコンパスを頼りに進む。
 鮎喰川ぞいに県道を歩き、月の宮というかっこいい名前の集落から、入田という集落へ進む。橋を渡るとようやく人や車に出会うようになる。
 小学校の前を通る。小学校の前の交差点に看板がある。『この付近、なぜか、交通事故多発』と書かれている。いや、なぜかじゃなくて原因追求しろよとつっこみを入れる。

 県道21号を直進するとにぎやかな町にやってきた。せまい道路のすぐそばに山門がある。十三番札所『大日寺』だ。さらに道をはさんで向かいには神社がある。『阿波一の宮』だ。四国の一宮はすべて八十八ヶ所の寺に併設されているらしい。
 阿波一宮の祭神はコトシロヌシだった。驚いた。なぜコトシロヌシなのか。その謎は後日解けた。

 寺の脇を抜け、『→常楽寺』という道標を横目に常に楽しいなんて、いい名前ね、など言いながら歩くと十四番『常楽寺』に着く。立派な階段をえいこらと登り、厄坂とかいう階段にばらまからた一円玉を見て、お金を粗末にするな、とぶつくさ言いながら昇る。
 参拝を終え常楽寺の奥の院『慈眼寺』に入ったところで前から観光バスの団体がやってくる。

 十五番『国分寺』。国分寺なので当然これからあと3回出会うことになる。境内にはいると本堂は修理?中で覆いの中にあり見ることができない。かわり仮本堂としてウスサマ堂が案内されていた。こちらに参拝ください、と。
 少し迷って、いや私はトイレの仏様に挨拶に来たのではない…!と思い、覆われた本堂の前でお経を読んだ。
 しゅーそくせっしゅーわっ!ぎゃーてーぎゃーてーはーらーぎゃーてーはらそーぎゃーてーぼーじーそわかー般若心経ッ!イエー!!と言う。東方M1を意識しているのだけれど、やはりテンションが壊れている。

 十六番『観音寺』にお参りし、買い物すべくマルナカを目指す。遍路道を外れるので住民に道はあっちですよと教えてもらいありがとうございますと言う。二日目も同じことがあった。

 十七番『井戸寺』。お大師さまが掘った?井戸がある。顔を映してみてはっきり姿が映らないと健康に差し障りがあるらしい。確認して、しっかり映っていたので良かった。

 今日の行程を終え、鮎喰川緑地公園に向かう。予定を完了して寝床に向かうこの道のりが一番こたえる。中鮎喰橋を渡ればすぐに公園で休めるからな!そう自分を奮い立たせながら歩く。一生懸命歩いて橋を渡って気づいた。
 車がびゅんびゅん走るばかでかい橋の下にある公園。
 入り口がわからない。

 疲れた体でうろうろしてようやく見つけた入り口は、車がびゅんびゅん走る大きい道路の向こうにあった。横断歩道はない。車が途切れるのを待つこと数分。ようやっと渡り緑地公園のベンチに腰を下ろしたときは16時だった。
 公園内にはトイレと水があった。運が良い。これで用足しにコンビニなどへ行かなくて済む。

 トイレへ入るとパンツとズボンが赤く染まっていた。生理がはじまっていた。どうやら今日は尻を血で染めたままお寺を参拝していたらしい。
 早めにテントを立ててズボンをはきかえる。公園内は子連れの家族、犬を散歩させている人などがいたが、ほかにテントを立てている人もいたので人目を気にせず私もテントを立てた。先に立っていたテントは暗くなる前に撤収を始めていた。


 さて。明日は徳島市中心部にいきホテルに泊まるだけである。そこから先はノープラン。とりあえずここまで来れたことに安心し眠ることとした。

56,390歩 38.72㎞
ごはん 2,206円
お賽銭 4円
珠   300円