生存確認


こめの旅日記。

カテゴリ: 山行記録

9/11(水)
 ハートランドフェリー 【鴛泊港920⇒香深港1005】
 香深フェリーターミナル~桃岩登山口~元地灯台~知床~香深フェリーターミナル
 荷物はFT内コインロッカーにデポ
 宗谷バス【香深FT1515⇒船泊病院前1600】

※宗谷バスは10/1より時刻が改正されている http://www.soyabus.co.jp/routebus/rebun



 利尻島行のフェリーに比べて礼文島行のフェリーは人が多かった。自分がヤマノボラーだからか。大きめのザックを背負った人がいるとついついそちらに目が移る。オスプレイのザックに黄色いジャケットが目立つおじさんソロ、60リットルのザックを背負った190cmくらいあるガタイのいいお兄ちゃんと20リットルくらいのザックを背負ったお姉さんの二人パーティ、それぞれ20リットルくらいのザックを背負った英語で会話している男女のパーティ、みんな山に行くのだろうな、と観察しているうちに香深港へ着いた。今回は乗船時間が短いのでビールは遠慮しておいた。

 12kgザックをデポして桃岩登山口を目指す。下船後に同じ方向へ歩いていく観光客はいないようだ。みんな一体どこに行くのだろう。
 車道を詰めていくと『桃岩登山口近道』の看板がある。看板に従い細い道に入っていく。
 しばらく登っていると林の中からけたたましい獣の鳴き声が聞こえてくる。サルによく似ている。が、それはあり得ない。礼文島にはクマ、イノシシ、サル、キツネ、ヘビがいない。じゃあ何の声なのか・・・しばらく頭をぐるぐるさせていたがその主は突然林の中から出てきた。獣の声だと思ったのだが声の主はカラス大の真っ黒な鳥で、頭頂の一部分だけが赤色をしていた。図鑑や剥製だけでなら見たことがある。日本最大のキツツキ、クマゲラだ。クマゲラがいるのか、それもこんな接近した状態で見ることができるのか・・・としばし興奮した。
 桃岩登山口着。
 見事に人の気配がない。登山口駐車場には一台も車がない。
 そして花もない。天気が悪いから風景も綺麗と思えない。

 晴れていればもっと絶景だろうに、と想像力を働かせる。

 道なりに歩いていく。
 桃岩展望台でようやく人に出会う。ハイカーらしい格好の人と通常の観光客らしい服装の人が混在している。
 桃岩展望台から元地灯台まではお花畑に囲まれた稜線だ。行く先も来た道も全部ぐるり見渡せる。そして南方には利尻富士がどっしりと構えている。これで天気が良かったらいうことなしの絶景だっただろう。
 桃岩展望台の途中で見覚えのあるハイカー二人パーティに出会った。英語で会話していた男女だ。男性が白人だったのでよく覚えている。しかし一体この二人、どこから登ってきたのだろう。ここに来るまで誰にも抜かれた覚えはないのだが・・・。私が歩いている間、バスで登山口まで来たのだろうか。

 桃岩展望台コースは木道の整備中らしく、土木作業者が土を掘って階段を埋め込む作業をされていた。多くは高校生くらいの若者に見えた。その中に数人、責任者らしきご年配の方がいらっしゃる。観光客を見たら挨拶をするように指導されているらしく、こちらが作業の邪魔をしているにも関わらずうっとうしがることなく笑顔で対応されていた。ありがとうございます、おかげで気持ちよく観光させていただいております。

以下、桃岩展望台コース写真
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ガラガラの駐車場
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お花畑。お花の時期じゃない・・・。
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桃岩
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桃岩横の崖
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桃岩展望台
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利尻山
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元地港

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これから進む稜線
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お兄さんと利尻
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桃岩荘 かの有名なお見送りの声が平面距離にして500メートルほど、標高差にして200メートルほどのここまで聞こえてくる
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元地灯台 フェリーで出会った二人パーティ。どこから登ってきたんだろう。RIMG1469
知床方面 知床といっても礼文島のシレトコ(行き止まり)

 利尻のセコマで購入したパンを元地灯台で食べ、知床バス停まで降りて徒歩でフェリーターミナルへ向かった。フェリーターミナル前の売店でビールを購入して一服。宗谷バスにて宿へ向かう。車窓から見た利尻山はまるで噴火しているかのごとく縦に雲がもうもうとあがっていて可笑しかった。

9/10(火)
 キャンプ場ゆ~に6:00⇒北麓野営場6:22⇒山頂9:20】
※北麓野営場にトイレ、自販機あり
 風呂やコンビニはゆ~にのほうが近い

キャンプ場ゆ~に 
http://www.town.rishirifuji.hokkaido.jp/rishirifuji/1133.htm
利尻富士温泉 
http://www.town.rishirifuji.hokkaido.jp/rishirifuji/1204.htm
※温泉はコインランドリー4台あり
 入り口に軽食ありと書かれているけれど営業していないようです


 北海道初ツェルトは強風の中だったがなんとかなった。ところどころたるんでいるが寝る分には問題ない。しばらくして隣にファミリーテントが建てられ、私のツェルトの小ささがよけい目立つ。
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目立つ

 ゆ~に内にはバーベキュー場が設けられており、そのおこぼれを狙うのか。カラスがたくさん飛んでいる。ザックを芝生に放置してトイレに行こうとすると、すぐにカラスが下りてきて食えるものがないかザックのまわりを歩き始めた。(この後、油断して明日の昼飯にしようと思っていたちくわパンを盗られる
 キャンプ場内に生ビールののぼりが立っている。吸い寄せられるように見ていると従業員のお兄さんが「今日は漁師さんからいいウニもらいましてね。おひとつどうですか??」と誘惑してくる。値段を見るとなんと500円。「じゃあ、焼きウニひとつ・・・あと、生ビールください」時間がかかるからテントまでお持ちしますよと言われたが、ヘロヘロのツェルトを見られるのは恥ずかしいので待つこととした。おそらくこの北海道旅行で一番いいウニを食ったことだろう。利尻山に乾杯しつつウニとビールを楽しんだ。
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 翌日。
 昨日の強風は嘘のようにやんだ。気温が上がり青空も見えてくる。もう少し涼しくてもいいけどな、と思いつつ歩を進める。北麓野営場でトイレ休憩。ここで出会ったおじさん曰く昨日は風が強すぎて山頂まで行けなかったらしい。ペシ岬から見ているだけでも風の強さが分かったし、さすがに利尻山は海の真ん中にぽつんと立っているからしてふきっさらしなのだろう。
 山行について。
 ゆ~にでは風は感じられなかったが標高を上げると西からの風が強いことがわかる。とはいってもハイマツがたくさん生えているので実際に風を全身に受けて歩くのは9合目から沓形分岐をぬけて赤茶けた火山礫(スコリア)の壁あたりまでだ。一番風が強いのは沓形分岐付近。体が吹き飛ばされそうになる。山頂付近は風はほぼない。山頂と言ってはいるが実際の山頂は崩落が激しいため立入禁止。神社のやしろが立つところを山頂としている。
 利尻山。全行程10時間は覚悟しろとビビらせてくるが、この手のビビらせは有名すぎて人がたくさん来る山ならではのビビらせなので、普段から山に慣れている人は行程8時間も見ておけばいいだろう。沓形コースへ行く場合はちょっとわからないが。
 
 以下、写真


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礼文島が見える

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6合目 標高700mくらいだけどハイマツ帯
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近くで見ると谷が深くえぐれているのがわかる

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これから歩く稜線がわかりやすい
右下の赤い屋根が避難小屋 この日は小屋内で修復?作業をされていた

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沓形港方向
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えぐれた谷
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雲の流れが速い ここでウインドブレーカーを着るがこの後すぐに風のない場所をあるくことになり脱ぐ
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9合目
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山頂の社
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本当の山頂 立入不可
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沓形分岐 写真を撮っている間も体がぐらぐらしていた


 下山後はセコマにてジャンプを購入(月曜日には売ってなかったのだ!)、利尻富士温泉で汗を流しゆ~にでビールを飲んで就寝。
余談だがこの夜は1時ころに目が起き上がるとツェルトの中に蟻の大行列ができていて難儀した。蟻の通り道に私の額も含まれていたらしく、払った蟻が大量に枕元に落ちて動かなくなっていた。
 いったいあれらは何がしたかったのだろう・・・巣をつくろうとしていたのだろうか。

9/2
阿寒バス 【阿寒湖温泉1600⇒釧路1750】

9/3
阿寒バス 【釧路バスターミナル725⇒羅臼バスターミナル1105】
※羅臼中心部に行くのであれば羅臼本町で下車がよい
 羅臼BTまで行けばコインロッカーが使用可能(大サイズ200円)
 羅臼BTから羅臼中心部までは徒歩10分ほど

斜里バス 【羅臼バスターミナル1320⇒ウトロ温泉バスターミナル1410】
※羅臼ウトロ線は阿寒バスのHPに記載されているが運行は斜里バスが行っているので
 チケットは釧路BTでは購入不可
 ウトロ温泉BTのコインロッカーが使用可能(大サイズ500円、コインいっこタイプ)

斜里バス 【ウトロ温泉1510⇒知床五湖1535】
斜里バス 【知床五湖1640⇒岩尾別1644】
ホテル地の涯て送迎バス

9/4
羅臼岳ピストン 登り片道3時間11分
※荷物はホテル地の涯てにてあずかり、宿泊者は下山後の温泉が無料になる。
 また、希望すれば朝食はお弁当にしてくれる。お弁当は前日20:00ころ渡し。同時にチェックアウトをすませる。部屋の鍵は翌朝出ていくときにフロントへ。
 ホテル地の涯てでは日帰り入浴も可能。1000円だったかなあ。
ウトロ温泉BTまでホテル地の涯て送迎バス
斜里バス 【ウトロ温泉バスターミナル1700⇒斜里バスターミナル1750】

※バスは季節運行の場合があるのでホームページで要確認
 阿寒バスhttp://www.akanbus.co.jp/localbu/
 斜里バスhttp://sharibus.co.jp/s/lb.html



 北海道の北東にぴこっと飛び出た半島、これこそが日本で三番目に世界自然遺産に選ばれた知床だ。知床、シレトコというのはアイヌ語のシリ・エトクからきており、地のはて、いきどまり、さきっぽ、というような意味らしい。そんなありふれた単語なので、道内には知床という地名が頻繁に見られるらしい。
 知床半島の東側が羅臼で、西側がウトロ。そして半島のどまんなかに連なる山脈が知床山脈。幅10km~20km程度しかない知床半島をして羅臼とウトロで全く気候が異ならしめているのはこの山脈があるからだ。山が海風を受けることで一方は雪、一方はフェーンであっつい!一方は霧、一方は快晴!みたいな気候を成している。
 そんな知床へ釧路から一気に一日で移動してしまおう。

 阿寒から釧路に移動し一泊。駅から線路を超えて徒歩10分ほど離れたラスティングホテルという宿に宿泊したが朝食がなかなかよかった。釧路駅の周りはわりと田舎で飯を食う場所もないしセコマも遠いので助かった。満足して出発。ちなみに釧路初日は徒歩30分ほどのスーパーマーケットで飯をゲットしていた。

 釧路BTにて当日チケットを購入し羅臼へ移動。
 羅臼では道の駅で奮発してウニイクラ丼と知床ビールをいただく。
 羅臼昆布を食ってるウニの卵巣が不味いわけがない!!とは思ったが普段食べ慣れているはずもないウニの味の違いはわからない。ビールは不味くはないが旨くもなく。青いビール、流氷ドラフトで一躍有名になった網走ビールが醸造元とあり、こちらは緑の色がつけられていた。流氷ドラフトは関西でもちょくちょく売られているが知床ビールは見たことがない。売れなかったのだろうか。その後は国後島を眺めたり明日登頂予定の羅臼岳を眺めたりしながらバスを待つ。
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羅臼から国後島
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羅臼から羅臼岳
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羅臼道の駅にある”小学生がつくった羅臼観光案内”。2階のあまり人が来ない場所にあるのだがよくできていて一見の価値がある。
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観光船から見られる生き物情報

 羅臼BTにて当日チケットを購入しウトロ温泉BTへ移動。この羅臼ウトロ線だが、知床峠からの国後島の景色が素晴らしい。また、羅臼岳の姿も間近に見られる。北海道に行ったらこのバス路線はおすすめしたい。
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知床峠付近より国後島
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羅臼岳。今まで見たことない綺麗な傘雲。天気が心配。

 ウトロ温泉BTより知床五湖へ移動。
 知床五湖には地上遊歩道と高架木道がある。一湖まで見学可能な高架木道は無料で歩くことができる。地上遊歩道は有料かつ利用前にレクチャーの受講が必要、かつヒグマの出没状況によっては閉鎖されることもある。知床五湖散策路の情報などはHPにて確認できる。https://www.goko.go.jp/index.html
 今回は時間もないので高架木道のみ散策。晴れ渡るオホーツク海の静けさと暗雲たちこめる知床山脈の対比が印象的だった。
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知床五湖よりオホーツク海
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知床五湖より知床山脈


 9/4。山登り。ホテルの部屋でチェックアウトの準備。弁当にしてもらった朝食を部屋でさっそく食していると外から羅臼岳への登山客とおぼしき熊鈴の音や車のエンジン音が聞こえてくる。早く出立しないといけないかな?と気持ちはせかされる。
 羅臼岳は知床自然遺産、核心地域のど真ん中にある。知床世界遺産内は人の手をいれず原生の自然を保護しようという"知床自然遺産核心地域"と、人の利用を視野にいれて自然を保全していこうという"知床世界遺産緩衝地域"に分けられる。羅臼岳および知床山脈はその全社の範疇だ。
 えっ、そんな保護地域なのに登山道をつくっちゃっていいの?人が入っていいの?いいらしい。入山許可も不要。登山口の登山届に名前と入山日、時間、下山時間を記入するだけ。京都の芦生原生林よりも緩い。そんなお手軽に知床自然遺産を体全身で堪能できるのだから入山しない手はない。

 標高差1450メートル、山頂まで片道5時間と数字でびびらせてくるが心配はいらない。昭文社山と高原地図を見ていると"ヒグマ出没頻度が非常に高い"と記載されている箇所が2つもあるが、しっかり鈴を鳴らして自分の存在をアピールしておけば向こうから近づいてくることもないので必要以上に恐れることはない。
 道について。羅臼平までは特に急だったりしんどい場所は無く、強いて言えば大沢のザレ場が滑落注意、というところ。大沢、地面はザレザレで滑りやすく、登山道の脇には真新しい金属の杭が打たれている場所もある(核心地域なのに・・・!)。毎年、積雪と雪解けのたびに斜面がどんどんえぐれて地形も変わっているのだろう。
 ちなみに大沢は山と高原地図によるとヒグマ出没頻度が非常に高いとされているが、展望がひらけているので人間がヒグマをみつけやすい、というのが本当のところだろう。ヒグマ自体はこの山のどこにでもいると考えた方がいい。なおここからは北側の展望がよく、昨日訪れた知床五湖がよく見える。
 大沢を登りきると羅臼平だ。羅臼平にはフードロッカーがある。フードロッカーとは食物を保管しておくための入れ物である。そうそう、羅臼平から先は急坂だから、ここに荷物をデポしておいて・・・という目的のために設置されているのではない。自然遺産内の羅臼岳。テントを張っていい場所はあらかじめ環境省から指定されている。羅臼平はその数少ないキャンプ指定地のひとつだ。先ほど申し上げたとおり知床半島はヒグマ生息地。しかも世界有数の頭数らしい。ヒグマ生息地でテントを張って宿泊する場合の鉄則がある。”寝る場所、料理する場所、飯を置く場所を分ける”だ。もしテントの中に食材を置いたままにしているとそのにおいでヒグマが寄ってくる可能性がある。だから宿泊する際は食材はフードロッカーに入れておくのだ。また、テントもフードロッカーから離れた場所に設置する。関西では全く馴染みのない習慣だが、クマ密集地では鉄則である、と稚内から札幌へ向かうバスで隣に座った青森八戸出身の方がおっしゃっていた。
 フードロッカーを横目に羅臼平からどんどん高度を上げていく。高度を上げて半島の先を見れば硫黄山がだんだん姿を現す。その向こうには水平線が青く輝く。国後島も姿を見せる。岩清水分岐詰めると道は険しさを増し、最終的に岩にしがみついてよじ登るようになる。岩にはペンキで矢印が記されている。矢印に従い進んでいき登り詰めたところが山頂だ。山頂といっても岩のてっぺんに看板が刺さっただけのような場所だ。10人くらいは座れるだろう。今まで感じなかった風がびゅうびゅうと吹き付けてくる。オホーツク海からの風だ。長居すると寒かろうがたっぷり40分間居座り、すっかり体が冷えて身震いするようになったところで下山を開始した。

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木下小屋
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登山口
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水場の近く。硫黄のにおいが流れてくる
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大沢のガレ
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大沢で振り返る。知床五湖が見える
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羅臼平から羅臼岳を見上げる
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フードロッカー
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国後島
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三ツ峰側
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天空の道
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羅臼岳山頂
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山頂から半島側
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羅臼湖
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ウトロ温泉、オホーツク海
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登山口ヒグマ情報

9/2
阿寒バス 【阿寒湖温泉730~滝口735】
徒歩   【登山口740~山頂1000~40分休憩~登山口1310~阿寒湖温泉1350】

※雄阿寒岳登山口へのアクセスとしては、船で行くという手段もある(!)
 阿寒観光汽船にて、2名以上なら片道1000円 1名なら1500円
 6分前後で登山口に着くそうです。

※阿寒湖温泉バスセンターは施設が充実している。
 コインロッカー200円 日帰り入浴500円
 素泊まり¥4000
 風呂は源泉。熱かったら自分で加水して調整
 バスセンターはセイコーマートに隣接



 どこの山に行くの?と尋ねられたのは西別岳小屋での話。外でのBBQを終えて室内で北海道名物鶏もつ鍋を食している間のこと。すでに日本酒一升も空になり、赤霧島をストレートで頂いている。
 次は雄阿寒岳に行きます、と答えたところ山岳会議論が始まった。雌阿寒の方がいいよ、とおっしゃったのは山岳連盟副会長氏。雌阿寒は間近に目にする噴火口の迫力が素晴らしい。いやしかし噴火口を近くで見られる山って本州にもあるじゃないですか、と意見したのは山岳会メンバーでこの中では最年少の男性。百名山で深田久弥が登ったのは雄阿寒だし、と続く。私は……とここで発言。雄阿寒岳からしか見れない湖があるじゃないですか。その景色を見たいので、雄阿寒にしました。なるほど、ペンケパンケね。あ、釧路の人はパンケトーとペンケトーをそう略すんだ……。
 師匠は雌阿寒と雄阿寒どっちがいいと思います?と副会長氏がこの場の最年長の男性に尋ねる。もともとこの西別岳小屋の呑み会は、彼の快気祝いだった。こんな景色悪い日に西別岳登るんですか?ばかやろう、景色なんてどうでもいい、呑めればいいんだよ、という会話が為されたそうだ。
 彼は、雄阿寒だな。と静かに答えた。


 そんなやりとりもあったけど当初の予定を変えることもなく阿寒湖温泉に宿泊する。
 JR摩周駅から阿寒湖温泉へ行くバスは、泊まるホテルを告げるとそのホテルの前まで送ってくれる。摩周湖展望台で合流した香港の彼女とは方向性の違いによりそこで別れ、(はぶあないすとりっぷ!ゆーとぅー!ないすとぅーみーとゆー!さんきゅー!とかいうやりとりをした)私はニュー阿寒ホテルに宿泊する。客がめっちゃいっぱいおって落ち着けないけど朝飯夕飯のバイキングはもう今まで見たことのないボリュームだし(おかげでどこに何の料理があるのかさっぱりだった)屋上の温泉も、まるで阿寒湖と一体となったかのような感覚を味わえるし部屋はツインだしそれで値段は8000円いかないしわりと良いのではないでしょうか。よくないのは朝のバイキングが込み合っててバスに間に合うかハラハラした点。


 さて、山に登りましょう。登山口はバス停でいうと滝口。阿寒湖のはしっこにあたるのだが、阿寒湖とはまたちがった趣で、一応、景勝地らしい。十九列島という名前が与えられている。
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 観光客はほとんどおらず、静かな雰囲気があり、とりまく森は野性味がある。滝口から10分ほど進むと太郎湖、次郎湖という湖もあり、こちらも太陽光の角度によっては非常に美しい姿を見せる。
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 次郎湖分岐で左に曲がらず右の坂を登っていく。といっても全体的にきつい坂はあまりない。きつい坂が出てきたなあ、と思ったらすぐに平坦地が始まる。だから登りも下りもスピードがほぼ変わらない。

 ヒグマへの恐怖があるので熊鈴をがんがんに鳴らして歩く。熊鈴を鳴らせば大抵の動物は避けてくれるのだがどうも随分人慣れした動物もいるものだ。目の前に茶色い物体がいる。立派なけつをこちらに向けてゆったりと登山道を歩いている。ときおり立ち止まりゆっくり振り返り、私に気だるそうな目を向けてくる。エゾシカだ。
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 クマより鹿のほうが肝が据わってるね。とは稚内から札幌へのバスで隣になった男性の談だ。エゾシカは熊鈴ごときじゃ逃げてくれない。クマの肝が据わってなくてよかった、と思うばかりである。
 ああ、すいません、どうぞ進んでください、あとできれば道をゆずってもらえないでしょうか。鹿に向けてそう言いながら今年の1月4日に滋賀県は管山寺で出会った道案内するニホンザルのことを思い出していた。
 数分歩いたところでエゾシカは道をゆずってくれた。その後エゾシカは私なんぞには目もくれず、ずっと後方へ視線を向けていた。まさかそっちにヒグマがいるんじゃなかろうか。いてもとっくに私の存在には気づいているだろうから登山道に出てくることはないだろうけれど。

 さて、雄阿寒岳の道については詳しい地図やパンフレット(釧路のフィッシャーマンズワーフでゲットできる)があるので私は詳述しない。関西民にわかりやすくいうなら、ときおり大津ワンゲル道が現れる平坦地で最後に火山らしいザレ場岩場がちょっとある、というところか。登山道からは阿寒湖の姿を、山頂からはパンケトー含む雄大な森林地帯を見ることができる。以下に写真を羅列しておく。

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野趣あふれる登山口
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雌阿寒岳がくっきり
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阿寒湖もくっきり
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ハイマツをぬけて
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カルデラを片目に
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最後のザレの登り
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山頂!
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北西側
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西側
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北東側
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パンケトー
パンケトーへ行く道は閉鎖されているのでパンケトーを見るには雄阿寒岳に登るしかない。

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おまけ。阿寒湖温泉で芝喰う鹿

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雄阿寒岳 右下のセコマが阿寒湖バスセンター
赤白の矢印は道路の端を示すもの。北海道ではよく見る。ちなみに矢印の裏側は黄色と白。

8/31
JR 【釧路⇒摩周】
阿寒バス 【摩周1030⇒摩周第一展望台1055】
徒歩 【摩周第一展望台1100⇒西別岳小屋1430】

9/1
徒歩 【西別岳小屋710⇒摩周第一展望台1230】
阿寒バス 【摩周第一展望台1410⇒摩周1435】
阿寒バス 【摩周1445⇒阿寒湖温泉1535】

※阿寒バスは季節運行の場合があるのでホームページで要確認 http://www.akanbus.co.jp/localbu/

このルートの詳細は北根室ランチェイHPにてどうぞ http://kiraway.net/



 生きているうちにやりたいことがあるんだ……それはね。日本全国のロングトレイルを全部歩くこと。そのためにまずは北から行こう。そうだな、まずは北根室ランチウェイ、通称キラウェイに行くのだ。と考えネットでいろいろ調べていたのだけれども全部歩くのめんどいな?普通に北海道旅行したいな??と路線変更。世界にも人気の北根室ランチェイのうち一番景色のよさそうなstage05(西別岳小屋~摩周湖第一展望台)のルートのみを歩くこととした。

 当初の予定はJR釧路~JR美留和~徒歩にて摩周第一展望台だったのだが釧路は朝から雨。テンションも上がらないので釧路から摩周まで電車に乗り摩周第一展望台までバスで行くことにする。エゾシカを警笛で散らしながら湿原を走り抜ける電車。釧路湿原は広大なので電車でも通り抜けるのに20分ほどかかる。今回の旅程に釧路湿原を組み込まなくて正解だった。

 摩周駅着。物好きもいるものでこんな雨でも摩周湖行きのバスには少ないけれど人がいる。雨の釧路の街を走り、摩周湖へと高度を上げるバス。するとどうだろう。標高があがるにつれ雨が晴れてくるじゃあないか!風はいまだ強いけれど、空は雲が晴れて青い箇所もある。雨女を自認していた私だが、どうも今日は”持ってる”らしい。車窓を見てわくわくしているうちに目的地へ到着。ランチェイへ歩き出す前にまずは摩周湖を見てみる。霧で見えづらいが展望台からは摩周湖の姿をうっすら拝むことができた。
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 駐車場の脇の登山口にて身支度。晴れてるから大丈夫と思いきや天気はだんだん白くなるし雨も降りだすし風も出てきた。辺りは霧と雲だけだ。展望なんてのぞめやしない。晴れてたら左手に摩周湖が見えるのだろうか。摩周湖展望ポイントはいくつかあるのだが景色は
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 樹林帯を過ぎて稜線に出てくるが景色は無論見えないし雨は降るし風は吹く。歩かなければ体温がどんどん下がる。これはまずいとザックを下ろしウインドブレイカーを着る。べとべとになっているザックにカバーを着せる。視界は利かないのでどこまで稜線が続くのかわからない。寒さに体がぶるりと震えだした頃に、これはもう着ておかないとまずいかな、と風がごうごう吹く稜線の真ん中でレインウェアを着る。冬山のアイゼンとかもそうなんだけど、いつもいつも、持ってきたギアをいつ装備するか、そのタイミングが難しい。
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 さて。いくら足が遅くても4時間も歩けば西別岳小屋に着くだろう。ほんとは知らない土地で知らない道で荒天で心細くって仕方ないが、そのように考えて早足目に歩を進める。進まないと目標にはたどり着かない!とぶつぶつつぶやきながら歩く。視界が利かないので熊も怖いので歌も口ずさんでみる。そしてなにより怖いのは低体温症なのでとにかくがしがし歩く。しかし15分おきにザックを下ろして水を呑む。レインカバーを着せてしまうとザックをおろさないと水を飲めないのだ。

 摩周岳もこの天気では視界が利かないだろうから巻いていく。西別岳に着くが真っ白だし風も強いしさっさと去る。RIMG1055
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お花畑やがまん坂もどんどこ過ぎて行き、やっと西別岳小屋に着いた頃にはずぶ濡れだ。小屋には先着三名が小屋の外でお酒を交えてバーベキューを楽しんでいる。挨拶もそこそこに濡れたものを干すことに専念する。
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 西別岳小屋、設備は立派すぎるし布団はたくさんあるし二階もあるしトイレもあるし水も置いてくれてあるしで至れり尽くせりな小屋だ。下手な山小屋よりずっと立派だ。

 荷物を整理しトイレに出る、そこで三人の方にいっしょに一杯やらないかとお誘いを受け、小屋泊ながらお酒をたしなみ焼き肉を楽しませていただく。その後ひとりふたりと増えてもつ鍋もつつき楽しい一夜を過ごさせていただいた。
 個人情報なので詳述はしないが、四名が釧路の山岳会の方々、一名が香港からランチウェイを歩きに来た方だった。翌朝もうどんをごちそうになり昼飯用にとおにぎりもいただいた。


 翌日。小屋を軽く掃除している間にも小屋前の駐車場には続々車が来る。五台くらい来ただろうか。西別岳は北海道ではわりと有名らしい。後日登った雄阿寒岳で出会ったおじさんも西別岳が好きと言っていた。
 山岳会のお三方は今日は温泉行って帰るとのことでお別れ。御一人は先に西別岳へ登られ、香港の方はまだ起きたばかり。私は7:10頃に西別岳小屋を出発。さて。今日は天気がいい。昨日全く見えなかった展望が期待できるだろうとウキウキと歩き出す。果たしてその結果は写真を張り付けておこう。
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がまん坂手前。すでに素晴らしい。
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がまん坂を上りながら振り返る。
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西別岳東斜面より。区画整理された感じのが牧場かな?
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待ってました。カムイヌプリとカムイトー!
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これから歩く稜線
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西別岳!
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西別岳より。地平線
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カムイヌプリとカムイトー
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西別岳から西側の稜線を見る

 がまん坂を乗り越えて西別岳へ登る斜面。ランチウェイが西からではなく東から始まる理由はここにあるのだろう。東側の展望が一気に開けるのだが、その展望がまさに。ランチウェイで今まで歩いてきた箇所なのだ。旅のフィナーレを飾るのにふさわしい景色といえるだろう。ここにさらに摩周岳をプラスしたら素晴らしい景色コンプリート感あるけど、まあ、香港から来た彼女は摩周岳行かないって言ってた。ついでにランチウェイステージ6(ほんとのフィナーレ)も行かないって。
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 前日にパスした摩周岳にもチャレンジした。ここに来たからには摩周湖の真ん中にそびえたつ摩周岳のてっぺんに立たないのは嘘じゃないか!
 分岐からそんなに距離はないな、と思って12kgのザックを背負ったまま摩周岳へ向かったのだが、この山、”あと400メートル”の看板が見えてからが本番だった。急斜面に無理やり取り付けた感のある不規則な石段や木の根っこにしがみついてえっちら登る。30分くらいかかったかもしれない。しかしてっぺんからの景色は何時間でも見てられる素晴らしいものなのでぜひ行こう。
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 摩周岳を降りたあとも素晴らしい景色が続く。これから進む稜線がずーっと西へと続いているのが見える。そして右手には摩周湖が輝いているのだ。

 摩周岳登頂を含めて約5時間半。摩周湖第一展望台に到着した。
 当初は摩周湖展望台からまた釧路へ戻り、釧路から阿寒湖温泉へ行く予定であったが、9/1まで運行しているJR摩周駅~阿寒湖温泉のバスがあると摩周駅で知ったのでありがたく利用した。バス情報を仕入れることができたので昨日は美留和からでなく摩周からスタートして正解だったのかもしれない。
 北海道旅行、幸先がいい!と思いながら摩周駅でバスを待つ間に駅前の足湯に入る。足湯は源泉のようで非常に熱かった。さて、次は阿寒湖温泉である。


 

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